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復活の日

1980年、角川事務所+TBS、小松左京原作、深作欣二監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

危険性への認識から、世界的に遺伝子操作によるウイルス研究への禁止令が出た翌年の1982年2月、東ドイツ、ライプチヒの細菌研究所から一台の自動車が雪の中を走り出す。

アメリカの研究所から密かに持ち出されていた「MM-88」と呼ばれる秘密の細菌兵器は、その車によって郊外の一軒家で待ち受ける某国の科学者へと渡されようとしていたのだ。

しかし、「MM-88」は、その計画を察知し、屋敷を襲撃した当局の手に渡る事はなかった。
すでに、セスナに乗った連中によって、国外へ運び去られようとしていたのである。
だが、そのセスナはおりからの猛吹雪に巻き込まれ、操縦不能を起こし、アルプス山中に墜落する。

この事故で、積んであった「MM-88」の入った容器も雪の山中で破壊されてしまう。

やがて春が訪れ、世界各地で、異常な出来事が起こりはじめる。
「イタリア風邪」という病気が各国でまん延し始め、膨大な数の人間や動物たちが死亡して行くのであった。

それこそ、-10度の低温下では眠っていた「MM-88」が気温上昇によって、猛烈な繁殖をはじめた証でもあった。

「MM-88」の致死率は45%。

わずか3ケ月で、地球上の人類及び脊椎動物は全て死滅してしまう。

ただ、その時、南極の各国基地で暮していた855名の男と8名の女性たちを除いて…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

有名な小松左京のSF小説を、巨費を投じて映画化した、角川映画の一つの頂点ともいうべき大作。

アメリカ大統領演ずるグレン・フォードをはじめ、ヘンリー・シルバ、ボー・スベンソン、ジョージ・ケネディ、ロバート・ボーン、チャック・コナーズ、オリビア・ハッセーなど、錚々たるハリウッドスターたちが出演しているだけではなく、実に堂々たる芝居を披露している。

さらにキャメラは木村大作で、核となる南極ロケだけではなく、南米をはじめ、世界各地で本格的な撮影を行っている事もあり、本作は日本映画であって日本映画らしくなく、あたかもハリウッド映画のような風格を持つ作品に仕上がっている。

千葉真一、渡瀬恒彦、夏木勲、緒形拳ら、日本人俳優の登場場面は、いつもの深作作品らしく「集団で」「熱く」「濃い」芝居が見られるのだが、外国人俳優の場面になると、(彼らに遠慮しているのか)ちょっと距離を置いた…というか、妙に落ち着いた客観描写のようになるのが興味深い。

主役の草刈正雄や夏木勲は、当時、相当、英語の特訓を行ったと見え、それなりに他の外国人俳優と互角に渡り合っている。(ただ、体格の良い他の外国人の中にいると、草刈正雄はちょっと線が細すぎて、存在感が弱く感じられる恨みはあるのだが)

全体としては、非常に生真面目に撮られた「文芸作品」のような趣を持つ作品になっており、それはそれで原作が持つ魅力の一面ではあり、その部分の具現化には一応の成功を見た…といって良いだろう。

ただし、一方で原作が持っていた娯楽作品としての魅力に関してはどうかといえば、必ずしも成功しているとはいいがたい。

特に、原作が持っていた「強烈なサスペンス要素」は、映像では出ていないように思える。
「ARS」(自動報復装置)が動きだしてからのサスペンスが特に弱い。

これは、文章から想像力を掻き立てられる小説というものと、具体的な画像を漫然と見てしまう映画との違いから生じているとも考えられるが、本作では、主人公を含む主要な人物たちが、皆、南極という隔絶された地域に住んでおり、そのためにどうしても、人類絶滅の部分や、核ミサイルへの恐怖という出来事が、遠い大陸の出来事、他人事のように感じられてしまう、見えてしまう、そういう設定上の特殊性から来ているとも考えられる。

それはそれとして、登場する本物の潜水艦や、本物の風景の迫力には、正直圧倒される事請け合いの力作である。